慢性腎臓病

慢性腎臓病

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)について

慢性腎臓病とは?

「腎臓」が担う大切な役割とは?

腎臓は腰のあたりに左右1個ずつあり、握りこぶしほどの大きさの臓器です。心臓から送り出される血液の約20%が流れ込み、毎日約150〜180Lもの血液をろ過して老廃物を尿として排出しています。
また、血圧の調整や血液を作るホルモンの分泌、骨を健康に保つなど、私たちの生命維持に欠かせない「肝心かなめ」の役割を担っています。

「慢性腎臓病(CKD)」の定義は?

CKDとは、下記のいずれか、または両方が3ヶ月以上持続している状態を指します。

腎障害の存在が明らか(尿たんぱくなどの尿異常、画像診断、血液検査など)
腎機能の低下(eGFRという数値が60mL/分/1.73㎡未満)

日本国内におけるCKDは「新たな国民病」?

日本国内のCKD患者数は約2,000万人(成人の約5人に1人)と推定されており、高齢化に伴い増加の一途を辿っています。CKDは初期には自覚症状がほとんどありませんが、放置すると末期腎不全に至り、人工透析や腎移植が必要になるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの「心血管疾患(CVD:Cardiovascular Disease)」を引き起こす重大なリスクとなります。

主な原因は?

生活習慣病(糖尿病・高血圧など)

現在、透析導入の原因第1位は糖尿病(糖尿病性腎症)、第2位が高血圧など(腎硬化症)です。特に腎硬化症は高齢化とともに年々増加しています。これらは血管を傷つけ、腎臓のフィルター機能を低下させます。

加齢

腎機能は年齢とともに低下する傾向があります。

慢性腎炎など

免疫の異常などにより、腎臓の糸球体に炎症が起こる病気です。

その他

肥満、喫煙、多発性嚢胞腎(遺伝性疾患)などが挙げられます。

主な症状は?

CKDは「沈黙の臓器」と呼ばれる腎臓の病気であるため、かなり進行するまで自覚症状が現れません。

初期
ほぼ無症状(健康診断の尿たんぱく指摘などで発見されることが多い)
進行期
むくみ、疲労感、夜間尿、息切れ、貧血など

症状が出たときには、すでに回復が難しい段階まで進行している場合があるため、早期発見が極めて重要です。

慢性腎臓病の診断や検査

慢性腎臓病の重症度分類(ステージ)

CKDの重症度は、「原因(Cause)」「腎機能(GFR)」「たんぱく尿(Albuminuria)」の3つの組み合わせ(CGA分類)で評価されます。

  • 腎機能(G1〜G5): eGFRの数値により6段階に分類。
  • たんぱく尿(A1〜A3): 尿に出るたんぱく(またはアルブミン)の量により3段階に分類。

リスクの高さは「緑 ⇒ 黄 ⇒ オレンジ ⇒ 赤」の順に高くなり、赤に近いほど末期腎不全や心血管死亡の危険性が高まります。同じeGFRでも、たんぱく尿の有無でリスクは大きく変わります。ご自身がどの色(リスク区分)にいるのかを知ることが、治療の第一歩です。診察時にご自身の区分をお気軽にお尋ねください。

原疾患 / GFR区分蛋白尿区分A1A2A3
糖尿病関連腎臓病尿アルブミン定量(mg/日)
尿アルブミン/Cr比(mg/gCr)
正常
(30未満)
微量アルブミン尿
(30〜299)
顕性アルブミン尿
(300以上)
高血圧性腎硬化症
腎炎
多発性嚢胞腎
移植腎
不明
その他
尿蛋白定量(g/日)
尿蛋白/Cr比(g/gCr)
正常
(0.15未満)
軽度蛋白尿
(0.15〜0.49)
高度蛋白尿
(0.50以上)
GFR区分
(mL/分/1.73㎡)
G1正常または高値
(≥90)
G2正常または軽度低下
(60〜89)
G3a軽度〜中等度低下
(45〜59)
G3b中等度〜高度低下
(30〜44)
G4高度低下
(15〜29)
G5高度低下〜末期腎不全
(<15)

腎臓病の重症度は、原因となる病気・腎臓の働き・尿たんぱくの量を組み合わせたステージで評価され、緑色を基準に黄、オレンジ、赤とステージが上がるほど、将来透析が必要になったり心臓や血管の病気になったりする危険性が高くなります。(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変)

出典:一般社団法人 日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024」

どのような検査が必要になりますか?

尿検査

尿たんぱくや血尿の有無を調べます。特に高血圧の方では「尿たんぱく/Cr比」を、糖尿病の方では更に細かい「微量アルブミン尿」などを測定することで、1日のたんぱく排泄量を推測し、病状を正確に把握します。

血液検査(血清クレアチニン・eGFR)

筋肉から出る老廃物(クレアチニン)の濃度から、腎臓が1分間にどれだけ血液をろ過できているか(eGFR)を算出します。しかしながら、”eGFR”は年齢・性別・筋肉量により数値が変動しやすい特徴があります。そのため、筋肉の少ない高齢者や痩せ型の方、筋肉質な方では正確に評価できない場合があります。そのような場合は、筋肉量の影響を受けない「シスタチンC」を測定することで、より精密に本来の腎機能を把握することが可能なため、必要に応じて追加検査をご案内することがあります。
さらに、腎機能は「現在の数値」だけでなく「低下のスピード」も重要です。「クレアチニン」の数値よりも「eGFR」に注目してください。たとえ現在のeGFRが基準値内であっても、年々速いペースで低下している場合は、早めの対策が必要になることがあります。このため当クリニックでは、過去の健康診断結果をお持ちいただくことを強くお勧めしています。数年分の推移がわかるだけで、診断と治療方針の精度は大きく向上します。

画像検査(エコー/超音波検査など)

原因がはっきりしない方においては、腎臓の大きさや形、結石や腫瘍の有無、血流の状態などを確認することもあります。(※キュアステーショングループでは南砂院で専門の検査技師が行います)

慢性腎臓病の治療

どのような治療を行うのですか?

低下してしまった腎機能を完全に元に戻すことは難しいですが、CKDの治療の目的は「関連する合併症を予防」し、「現状の機能を維持し、悪化を食い止めること」にあります。

1. 生活習慣の改善
禁煙・節酒
喫煙は腎機能を悪化させ、心血管リスクを高めます。
適度な運動
メタボリックシンドロームの改善を目指します。
薬の注意
市販の痛み止め(NSAIDs:ロキソニン®やイブ®など)や一部の漢方薬、サプリメントは腎臓に負担をかけるため、服用前に相談が必要です。
2. 食事の工夫
塩分の調整
1日3g以上6g未満が目標です(患者さんごとに調整します)。摂り過ぎだけでなく、極端な減塩も低栄養や脱水につながるため推奨されません。日常生活での工夫としては、漬物や塩辛、加工食品、インスタント食品の摂取は極力控え、麺類の汁を飲み干さないなどといった習慣が大切です。またお料理の際には単に薄味にするだけでなく、レモンや酢などの「酸味」を効かせたり、ハーブや香辛料の風味を活用したりすることで、美味しく減塩を継続できるよう調理法を工夫してみましょう。
たんぱく質の調整
たんぱく質の摂り過ぎは体内に老廃物を蓄積させ、腎臓への負担となるため、進行度に応じて体重1kgあたり0.6〜1.0g程度に調整します。ただし一律の制限は行いません。特にご高齢の方では、過度な制限が筋肉量の低下(サルコペニア・フレイル)を招き、かえって健康を損なうことがあります。「制限すればするほど良い」わけではなく、進行度・年齢・体格に応じたバランスが最も重要です。カロリーはしっかり確保しながら調整していきましょう。
カリウムやリンの調整
カリウムやリンが多く含まれる食品(果物、イモ類、緑黄色野菜、豆類、乳製品、コーヒーや茶類など)の摂取量には、進行度によって注意が必要です。お料理の際には例えば「茹でこぼす」、あるいは「水にさらす」といった下処理を行うことで、含まれるカリウムなどを減らすことが可能です。一方で、早期のCKDから一律に生野菜や果物を我慢する必要はありません。自己判断で厳しくしすぎず、検査値を見ながら調整しましょう。
3. 血圧の管理

原則として診察室血圧130/80mmHg未満を目標としますが、糖尿病や尿たんぱくの有無、ご年齢によって目標値は異なります(高齢の方ではやや緩やかに設定するなど、個別に調整します)。

4. 薬物治療
降圧薬(RAS:レニン-アンジオテンシン系阻害薬)
高血圧治療薬には色々な種類がありますが、その中でもARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)やACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)と呼ばれる種類の薬剤は、血圧を下げるだけでなく腎臓を保護する効果があるため、第一選択として使用されます。
  • 薬剤の例:アジルサルタン、テルミサルタン、エナラプリルなど
SGLT2阻害薬
元々は糖尿病の治療薬ですが、近年、糖尿病の有無にかかわらず腎保護効果が認められ、積極的に使用されています。
  • 薬剤の例:ジャディアンス、フォシーガ、カナグルなど
その他
貧血を改善する薬、体内のカリウムやリンを調整する薬、尿毒症物質を吸着する薬など、病態に合わせて処方します。
  • 薬剤の例:ロケルマ、ダーブロック、リオナ、クレメジンなど
5. CKDに伴う合併症の管理

腎機能が低下すると、全身のバランスを維持するための調整機能が損なわれ、さまざまな合併症を引き起こします。これらを適切に管理することが、腎機能を守る鍵となります。

脂質異常症(悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪など)
CKDは動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高いため、厳格な脂質管理が求められます。特に悪玉(LDL)コレステロールを抑えることで、血管と腎臓の負担を軽減します。
高尿酸血症(痛風の原因物質)
尿酸値が高い状態が続くと、痛風発作だけでなく、腎臓の細い血管を傷めて腎機能をさらに低下させることがわかっています。食事療法に加え、必要に応じて尿酸値を下げる薬でコントロールします。
CKD-MBD(MBD:Mineral & Bone Disorder 骨・ミネラル代謝異常)
腎臓はカルシウムやリンのバランスを整え、ビタミンDを活性化させる役割があります。腎機能が低下すると、血液中のリンが上昇し、骨がもろくなったり、血管の石灰化(硬くなること)を招いたりするため、食事制限やリン吸着薬による治療を行います。
腎性貧血
腎臓は赤血球を作る司令塔となるホルモン(エリスロポエチン)を分泌しています。この不足により起こるのが「腎性貧血」です。一般的な貧血(鉄欠乏など)とは異なり、不足したホルモンを補う注射や内服薬による治療が効果的です。
代謝性アシドーシス(血液の酸性化)
腎臓は体内の酸を排泄し、血液を弱アルカリ性に保っています。排泄が滞り血液が酸性に傾くと(アシドーシス)、腎機能の低下を早めたり筋肉量を減らしたりします。塩分(NaCl:塩化ナトリウム)のバランスに注意しつつ、重曹などのアルカリ剤を内服して補正する場合があります。

イオンスタイル南砂クリニックの治療方針

イオンスタイル南砂クリニックでは、CKDが「心臓や脳の病気にも直結する全身疾患」であるという認識のもと、早期発見と多角的なアプローチによる進行抑制に注力しています。

生活・食事指導

腎臓病の治療において、日々の食事管理は欠かせません。当クリニックでは、患者様の現在の食習慣を丁寧にお伺いし、無理なく続けられる減塩のコツや栄養バランスについてアドバイスいたします。生活スタイルに合わせた具体的な改善案を一緒に考えていきましょう。

薬物療法

最新のガイドラインに基づき、ARB/ACE阻害薬やSGLT2阻害薬などを中心とした腎保護療法を行います。また、CKDに伴う貧血(腎性貧血)やミネラル代謝異常に対しても、血液検査に基づいたきめ細やかな調整を行い、全身の健康状態を維持します。

紹介基準

腎生検による精密な診断が必要な場合、急速な腎機能低下がみられる場合、あるいは末期腎不全に伴う透析導入の準備が必要な場合などは、速やかに連携する大学病院や基幹病院の腎臓専門医へご紹介いたします。

よくある質問(FAQ)

Q 症状が何もないのに、受診する必要はありますか?

あります。CKDはかなり進行するまで自覚症状が出ないため、症状の有無は重症度の目安になりません。健診で「eGFR60未満」「尿たんぱく陽性」のいずれかがあれば、無症状でも一度ご相談ください。

Q 健康診断の結果は何年分持っていけばよいですか?

お手元にある分すべてお持ちください。最低でも直近3年分あると、腎機能の「低下スピード」の評価に役立ちます。

Q 筋トレをしていてクレアチニンが高いと言われました。腎臓が悪いのでしょうか?

クレアチニンは筋肉量が多いと高く出るため、数値だけでは判断できません。尿検査や、筋肉量の影響を受けないシスタチンC検査で本来の腎機能を確認できますのでご相談ください。クレアチンサプリ使用中の方は必ずお申し出ください。

Q 腎臓が悪いと言われたら、市販の痛み止めは飲んではいけませんか?

絶対禁止ではありませんが、注意が必要です。特に脱水時や、ARB/ACE阻害薬・利尿薬を服用中の方がNSAIDs(ロキソニン®など)を重ねると腎機能が急に悪化することがあります。アセトアミノフェンなど負担の少ない選択肢もありますので、事前にご相談ください。

Q SGLT2阻害薬を飲んでいます。夏に気をつけることはありますか?

脱水に注意し、こまめな水分補給を心がけてください。発熱や下痢・嘔吐で食事がとれない日(シックデイ)は服用をいったん中止し、当クリニックまでご連絡ください。体調の良い日に自己判断でやめるのはお勧めしません。

Q 一度下がった腎機能は元に戻りますか?

慢性的な低下を完全に元に戻すことは難しいのが実情です。ただし、たんぱく尿を減らしたり低下スピードを緩めたりすることは治療で十分に可能であり、それが透析を防ぐ・遅らせることにつながります。

Q むくみがあるのですが、腎臓が原因でしょうか?

むくみの原因は腎臓のほか、心臓・肝臓・甲状腺・薬の副作用・立ち仕事など多岐にわたります。血液検査・尿検査・必要に応じた超音波検査で原因を調べられますので、続くむくみはご相談ください。片足だけの急な腫れ・痛みや、息切れを伴うむくみは早急に受診してください。

Q 食事制限は厳しくすればするほど良いのですか?

いいえ。過度な塩分・たんぱく質制限は、低栄養や筋肉量の低下(フレイル)を招き、かえって健康を損なうことがあります。進行度・年齢・体格に応じた「ちょうどよい調整」を一緒に見つけていきましょう。

内科・アレルギー科の一覧に戻る